「「粉飾国家」金子勝(講談社現代新書)」読みました!

画像
 日本国というシステムは、いつから なぜ 現在のように機能不全に陥ったのか?
公的年金制度の過去勤務債務について、なぜ未積立ての積立金が480兆円も簿外負債として財源の手あてもなく隠されているのか?
財政法の予定しない赤字国債が いつまで発行されていくのか?
なぜ公益法人や特殊法人の役員報酬や役員退職金は、営利法人より高く計算されるのか?
平成11年5月14日の『行政機関の保有する情報の公開に関する法律』の制定以来、国や県市町村の行政情報の公開は進んだが まだ理解できないことが多い。

 財政学者として、金子勝先生は その原因を 《政府の嘘と情報操作》から生まれたものであると分析される。 そもそも 政府が推計する480兆円もの膨大な未積立金は、政府の見通しの甘さから生じたものだ。 これまで、若い世代への保険料引き上げと 給付額切り下げを繰り返してきたが、それを延々と続けることには 限界がある。 こうしたやり方は、1980年代から続いてきたが、もはや政府の発表する《未来の希望的予測値》を ほとんど 誰も信用しなくなってしまった。 そして 誰も信じなくなれば、( 国民年金保険料も未払いがふくれあがり、 )予測以上の年金空洞化が進み、それが ブーメランのように返ってきて 政府の公表する《未来の希望的予測値》の信憑性を ますます破壊していく。 それは、「狼がきた」と嘘をついて村人を騙し、最後には誰も信じてくれなくなって狼に食べられてしまう少年の話にどこかにていると、金子先生は嘆かれる。
年金や財政の真の問題点を説明しない 政府のゴマカシの仕組みを、哀れな国民の立場から 憂国の情熱を持って解剖された本が、2004年7月に発行された「粉飾国家」だ。

 本の目次は、以下のとおり。
はじめに
第1章      年金改革      本当の問題は何なのか
第2章      巧妙な粉飾のメカニズム
第3章      粉飾国家と財政赤字
第4章      年金問題は、「過去の失敗のツケ」である。
第5章      年金会計が わかりにくい理由
第6章      粉飾会計の暗部・特殊法人
第7章      新しい年金制度を提言する。
第8章      年金財政を政府から切り離せ  福祉政府の創造へ
おわりに

  2008年から始まる団塊の世代の退職者に対する公的年金の支給が、未積み立て過去勤務債務の問題を表面化させる。2013年からは、ほとんどの団塊の世代が年金生活に入る。 雇用環境も非正規雇用の拡大がすすみ、国民年金制度の空洞化をまねき、保険料未納率は約37%になったということだ。 さらに、合法・非合法を問わず、中小零細企業を中心に 厚生年金制度から 抜ける動きも目立つ。 従業員5人未満にして個人事業者の加入義務を逃げようとする動きだ。さらに社会保険事務所を巡る不祥事の報道が、制度に対する信用を希薄にし 公的年金制度の空洞化が早まっているようだ。 現在の厚生年金制度は「長期雇用」を前提としているため、途中でリストラにあった場合、非正規労働になった場合、厚生年金は途中で切れてしまう格好になり、退職時の給付水準から計算される厚生年金の給付額は著しく低いものとなる。 さらに その後加入する国民年金は、定額保険料の上、給付は基礎年金部分だけとなり、40年間保険料を納めても 満額で月66,000円程度にしかならない。  国民年金だけしか給付がない人の老後の生活は、生活保護の給付水準以下となり、深刻だ。  現在の 約300万人の失業者、約420万人のフリーターや  厚生年金未加入のパート労働者などを合計すれば、非正規労働者数は約1500万人に達する。今のままの国民年金制度を残す限り、この1500万人の不利は、永久に解消されない。
金子先生の主張で、印象に残るのは、 P34-38(粉飾国家とは何か)の部分だ。
フィードバックが利かずに無責任体制の存続を許す日本社会の不透明な仕組みには 問題がある。
「粉飾国家」の仕組みは 3つのメカニズムから成り立っている。
まず第1に、表面上の財務数値の見栄えをよくするために、政府部門であれば、特殊法人や特別会計に赤字や不良債権を飛ばして隠す仕組みがある。
第2に、不確実な将来の予測を含む領域を最大限利用して、将来予測の前提となる数値や指標を操作して、その辻褄あわせのために都合の良い「将来の予測値」を選択する仕組みがある。
第3に、政府統計など立場上独占している情報の公開を遅らせたり、望ましい結論が出そうな対象を選んでモデル計算や現況調査をしたり、プロの仕事として口出しを押さえたりして、当事者以外には誰もわからない情報をつくりだし、一部のトップに情報を独占させて 自分たちの失敗を隠蔽できるパワーを持っている。
P181-184(受託者=国は説明責任を負うべし)も 国の財政計算と開示の仕組みに、営利法人の経営者の受託責任、説明責任を応用して、国家の説明責任の所在を追求した興味深い提案だ。
公的年金制度は、国民が 国に対して 年金保険料の運用管理を委託している仕組みであり、国から見れば 国民から 公的年金の運用管理を受託している仕組みである。公的年金に関しても、明確な委託・受託の関係が存在すると見なすことができる。
年金保険料の運用管理を委託された国は、第一に受託者として責任を持って「国民」の期待に応える義務を課される。国はその運用管理にあたって、決して放漫な運用管理活動に終始してはならない。第二に、国は責任を持って運用管理した結果を、「国民」に対して報告する義務を負う。委託者が、受託者の運用管理に明らかに誤りや不適当な判断・行動があったと評価した場合には、受託者は委託者に対してその受託物を返還する責任を負う。
P190-193(粉飾国家を解体して三つの福祉国家へ)の提言も、膨大な赤字をため込めない透明性の高い政府を求めての具体的な構想で、あるべき解決の方向を明確に示したものだ。
分権化の方向は、中央政府と地方政府の関係だけの問題ではない。粉飾国家の解体のためには、年金などの社会保障制度も、対象になる。より公正でわかりやすい公会計制度の整備と情報開示に基づいて、市民参加型の民主主義の保証が社会保障制度にも求められる。
「国民国家」が機能分化した三つの「福祉政府」とは、「中央政府」「社会保障基金政府」「地方政府」の三者である。

  政府の公表するデータや予測が発表年度によって相違していたりするため、電卓をたたきながら読んでいると計算が合わない部分はあるが、年金財政の問題を中心に 国民のチエックを受けにくい特別会計や特殊法人のあり方を 批判的に検討した本として、評価できる。
細かい数字に神経質にならず、大きな改革の方向を考える本として、年金保険料を支払っておられる方と、年金を既にもらっておられる方に読んでいただきたい本だと思いました。


参考ホームページ  :  

講談社ブッククラブ      http://www.bookclub.kodansha.co.jp/

内閣府ホームページ     http://www.cao.go.jp/

厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/

社会保険庁ホームページ http://www.sia.go.jp/

日本道路公団ホームページ http://www.jhnet.go.jp/

首都高速道路公団          http://www.mex.go.jp/

阪神高速道路公団 http://www.hepc.go.jp/

日本下水道事業団 http://www.jswa.go.jp/

公正取引委員会          http://www.jtfc.go.jp/

厚生年金基金 http://www.npfa.or.jp/

国民年金基金連合会      http://www.pfa.or.jp/

日本郵政公社      http://www.japanpost.jp/

預金保険機構              http://www.dic.go.jp/

産業再生機構 http://www.ircj.co.jp/

日本銀行  http://www.boj.or.jp/

総務省 http://www.soumu.go.jp/

総務省統計局         http://www.stat.go.jp/

国土交通省 http://www.mlit.go.jp/

農林水産省          http://www.maff.go.jp/

法務省  http://www.moj.go.jp/

経済産業省          http://www.meti.go.jp/

日本公認会計士協会 http://www.jicpa.or.jp/

         

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 国債

    Excerpt: 済夫:きょうはこの本を買ってしまったんだ。日本語と英語で書かれている。社会のしくみが解りやすく、ざっと説明されている。国債のところを見ていて、新しいことを知ったね。国債は、2種類あって、建設国債と赤字.. Weblog: 財政破綻に備えて勉強する。 racked: 2005-07-18 19:10